戦略の古典

経営戦略のフレームワーク一覧:状況に合うものの選び方

経営戦略のフレームワークは、「いま答えられない問い」と「市場がどれだけ読めるか」で選びます。決めることを書き、市場の予測しやすさと変えやすさを見極め、いちばんの不明点を特定してから、下の一覧から 1 つか 2 つを選び、順番に使います。

要点

  • フレームワークからではなく、決めることから始める。決めることのない分析は、誰も使わない資料になる。
  • 環境を見る。安定した市場なら分析して計画する方法、変化の速い市場なら試して学ぶ方法、危機のときは生き残りが先。
  • いちばんの不明点で選ぶ。業界の収益、自社の資源、ボトルネック、新しい市場、競合、顧客が買う理由で、合う道具が変わる。
  • 使うのは 1 つか 2 つ。1 つ目の結果を 2 つ目に渡す。

選び方が大事な理由

フレームワークは、それぞれ特定の種類の問いに答えるために作られています。5 つの力は業界がなぜその程度しか儲からないかを説明しますが、ある顧客がなぜ乗り換えたかには答えません。SWOT は要因を並べますが、どれを選ぶかは決めてくれません。合わない道具を使うと、数週間かけて、誰も尋ねていない問いに答えることになります。

よりどころになる記事がいくつかあります。BCG の Martin Reeves、Claire Love、Philipp Tillmanns は「Your Strategy Needs a Strategy」(Harvard Business Review、2012 年)で、戦略の進め方は環境によって変えるべきだと論じました。予測しにくい環境でも、安定した市場向けの計画の進め方を使っている会社が多い、とも指摘しています。この記事は、環境をどれだけ予測できるかと、自社がどれだけ形を変えられるかで分けます。BCG の「Why Strategy Needs a Strategy」(Reeves・Deimler・Love、2012 年)と戦略パレットは、3 つ目の軸として環境の厳しさを加えています。もう 1 つは Michael Porter の「What Is Strategy?」(HBR、1996 年)で、出てきた答えを確かめる物差しになります。競合と同じことをうまくやるのは業務の効率であって、戦略ではない。戦略とは独自の立ち位置を選び、何をしないかを決めることだ、という考え方です。

先に答える 4 つの問い

  1. 決めることを書く。この作業のあとで何をどう変えて決めるのか、誰がいつまでに決めるのかを書く。何も変わらないなら、フレームワークを選ぶ前に決めることを書く。
  2. 期間を決める。今四半期ならボトルネック、営業の流れ、小さな実験の方法。1〜3 年なら立ち位置、資源、成長の選択肢。それより先ならシナリオや地図の方法。
  3. 環境を見極める。1 年先の需要と競争を予測できるか、市場の仕組みを自社で変えられるか、いま事業が危機にあるかを問う。迷うなら、戦略スタイルの判定から始める。
  4. いちばんの不明点を特定して選ぶ。「これさえわかれば決められる」という事実を 1 つ挙げ、下の一覧で探す。選ぶのは 2 つまでにして、結果を渡す側を先にする。

状況別:合うフレームワーク一覧

状況、またはいちばんの不明点フレームワーク
この業界にいる価値はあるか。なぜ利益率が低いのかポーターの 5 つの力
コストで勝つか違いで勝つか、広く狙うか絞るかポーターの基本戦略
自社のどの活動がコストと価値を生んでいるかバリューチェーン分析
自社の資源のうち、他社がまねできないものは何かVRIO 分析
この読みやすさの市場には、どんな進め方が合うかBCG の戦略スタイル
どの会社も同じ要素で競っているERRC グリッドと戦略キャンバス
目標はあるのに、戦略と呼べるものがないルメルトの戦略の核
目指す姿から仕組みまで、選択がかみ合っていない戦略の選択のカスケード
いまの強みは、成長しても続くか持続する優位(ヘルマー)
1 つの工程や資源が全体の出来高を止めている制約理論
営業の役割、引き継ぎ、段階ごとの指標があいまい営業の分業と段階の指標
新しい製品に需要があるかわからない構築・計測・学習のループ
新しもの好きは買ったが、多数派が買わないビーチヘッドの市場
顧客はなぜ買い、乗り換え、離れるのかジョブ理論のスイッチインタビュー
製品や技術の部品のうち、どれが汎用品になるか。何を作り、買い、外に任せるかワードリーマップ
特定の競合 1 社に対して、自社はどこに立つか孫子:彼を知り己を知る
チームが目先の出来事に振り回されている五輪書の観の目
次はどこで伸ばすか。新製品か、新市場かアンゾフの成長マトリクス
外の大きな力が、数年のうちにいくつもの方向に転びうるシナリオプランニング
まず全員で全体像を共有し、打ち手に変えたいSWOT と TOWS

順番に使うとよい組み合わせは、5 つの力のあとに基本戦略、スイッチインタビューのあとにビーチヘッド、VRIO のあとに持続する優位の確認、シナリオのあとに戦略の核、です。

どれも合わないとき

戦略の問いに見えて、そうでないものもあります。費用のわかっている 2 社の業者から選ぶなら、判断のメモで足ります。価格が原価をまかなえるかは、ユニットエコノミクスの計算です。選んだ戦略を四半期の目標に落とすのは計画づくりです。決めることもきっかけも言えないなら、どのフレームワークもまだ役に立ちません。先に、決めることを書きます。

小さな例

説明のための架空の例です。歯科医院向けの予約ソフト「マド・クリニック」は、有料の医院が 180 あり、2 四半期続けて伸びが止まっています。6 週間後の取締役会で来年の方針を出す必要があり、動物病院に広げる案と、いまの医院に決済機能を足す案で意見が割れています。市場は安定していて、大手が 2 社、価格は何年も動いていません。資金は 20 か月分あります。そして創業者自身、医院が大手 2 社ではなくマドを選んだ理由を知りません。

環境は予測しやすく、危機でもないので、戦略スタイルの判定は要りません。いちばんの不明点は「なぜ選ばれたか」で、2 つの案はどちらもその答えに左右されます。そこで、まず最近導入した 8〜12 の医院にスイッチインタビューを行い、その結果を持ってアンゾフの成長マトリクスで新市場と新製品を比べる、という順にします。SWOT も候補に挙がりましたが、要因は並ぶものの、どちらの案かは決まらないので外しました。

よくある失敗

  • みんなが知っているからと SWOT から始める。
  • 念のためと 4 つのフレームワークを並行して回す。正しい順の 2 つのほうが、早く決まります。
  • 四半期ごとに変わる市場で、5 か年計画を立てる。方法を環境に合わせます。
  • 話題で選び、不明点で選ばない。「競合」という話題だけでは、5 つの力か、1 社との比較か、スイッチインタビューかが決まりません。

出典について

環境についての問いのうち、予測しやすさと変えやすさは Reeves・Love・Tillmanns の Harvard Business Review(2012 年)の記事に、厳しさは BCG の「Why Strategy Needs a Strategy」と戦略パレットにならっています。何を戦略と呼ぶかの物差しは、Porter の「What Is Strategy?」(HBR、1996 年)によります。一覧の振り分けは当サイト独自のものです。このページは独自の解説で、BCG、Harvard Business Review、各フレームワークの考案者の承認を受けたものではありません。戦略の名著とフレームワークの一覧もあわせてどうぞ。

よくある質問

経営戦略のフレームワークはどれを使えばいい?

まだ答えられない問いから選びます。業界の儲かりやすさなら 5 つの力、自社の資源なら VRIO、1 か所のボトルネックなら制約理論、新しい市場ならビーチヘッドや構築・計測・学習、特定の競合なら孫子の比較、顧客がなぜ買うかならスイッチインタビューです。

SWOT 分析だけで戦略になりますか?

たいていはなりません。SWOT は要因を共有するのには向きますが、どれを選ぶかは決めてくれません。TOWS で要因を打ち手に変えるか、選択を迫る方法と組み合わせます。

フレームワークはいくつ使うべき?

1 つか 2 つを、順番に使います。2 つ目は 1 つ目の結果を使うものにします。たとえば 5 つの力のあとに基本戦略を選ぶ、という順です。

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出典

  1. BCG:Strategy Palette — 事業環境に合わせて戦略の進め方を選ぶ (閲覧 2026-11-04)
  2. BCG:Why Strategy Needs a Strategy — 予測しやすさと変えやすさの 2 軸、厳しさの 3 つ目の軸 (閲覧 2026-11-04)
  3. Harvard Business Review:Your Strategy Needs a Strategy(2012) — 安定した市場向けの計画の進め方を、予測できない環境でも使ってしまう (閲覧 2026-11-04)
  4. Harvard Business Review:What Is Strategy?(Porter、1996) — 業務の効率は戦略ではない、トレードオフと適合 (閲覧 2026-11-04)