戦略の古典
THE MODEL(ザ・モデル)の要約:4 つの分業と、段階ごとの指標
『THE MODEL』は、福田康隆氏が B2B の営業の仕組みを書いた本です。仕事をマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの 4 つに分け、前の段階の成果を次の段階の母数として、組織全体を数字でつなぎます。実際に使うときは、段階ごとに担当、受け渡しの定義、転換率、かかる時間、処理できる量を表にし、伸びを止めている段階を 1 つ見つけて、そこから直します。
要点
- 本:福田康隆『THE MODEL』翔泳社(MarkeZine BOOKS)、2019 年 1 月。
- 4 つの分業:マーケティングが見込み客を集め、インサイドセールスが商談にし、フィールドセールスが受注し、カスタマーサクセスが契約を続けてもらう。
- 段階ごとに持つもの:担当、入口と出口の定義、転換率、時間、処理できる量。
- 肝:分けるだけでは回らない。定義と数字を全部門でそろえて、はじめて「共業」になる、と副題からは読めます。
どんな本か
著者の福田康隆氏は、1996 年に日本オラクルに入り、2004 年に米セールスフォース・ドットコムへ移りました。翌年からは日本法人で 9 年間、専務執行役員兼シニアバイスプレジデントを務めました。2014 年にはマルケトの日本法人の社長になりました。本は、日米のオラクルとセールスフォースで事業の成長に立ち会い、マルケトの日本法人を立ち上げた経験から書かれています。
副題は「マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス」。「分業」ではなく「共業」という言葉を選んでいるところからは、役割を分けるのは手段で、目的は部門をまたいで 1 本の流れとして売上をつくることだ、と読めます。Salesforce の日本法人も、社内で使ってきた営業プロセスのモデルを「The Model」と呼んでいます。
近い考え方は米国にもあります。アーロン・ロスとマリルー・タイラーの『Predictable Revenue』(2011 年)は、見込み客を探す人と契約をまとめる人を分けるべきだと説きました。『THE MODEL』は、この分け方を最初の接点から契約の更新まで広げ、段階をつなぐ数字に重心を置いています。
どんな会社に向くか、向かないか
売り方がある程度くり返せる B2B の会社に向きます。狙う顧客がはっきりしていて、専任の担当が忙しくなるだけの問い合わせや架電の量があり、契約が更新される商売です。マーケティングと営業が「リードの質」でもめている、売上が足りないのにどこで落ちているか誰も言えない、次に誰を採るか決めたい。こんなときに効きます。
逆に、少数の大型案件を 1 つのチームが最初から最後まで担う商売や、創業者がはじめての顧客に自分で売っている段階には向きません。渡すものがないうちに役割を分けても、つなぎ目が増えるだけです。1 件の商談を見直すなら商談レビューのほうが合います。
中心になる考え方
4 つの段階は 1 本の鎖。Salesforce の解説では、部門ごとに母数、成功率、ゴールを置き、ある部門のゴールが次の部門の母数になると説明しています。
| 段階 | 仕事 | 母数 | 成功率 | ゴール |
|---|---|---|---|---|
| マーケティング | 見込み客を集める | 来訪者数 | 獲得率 | 見込み客数 |
| インサイドセールス | 見込み客を育て、案件をつくる | 見込み客数 | 案件化率 | 案件数 |
| フィールドセールス | 商談を進め、受注する | 案件数 | 受注率 | 受注数 |
| カスタマーサクセス | 使いこなしを助け、契約を続けてもらう | 受注数 | 契約更新率 | 継続契約数 |
受け渡しの定義。段階と段階のあいだには、渡す側と受け取る側の両方が確かめられる定義が要ります。「熱いリード」のような形容詞では、毎週もめます。よく使われる呼び名に MQL と SQL があります。MQL はマーケティングが買いそうだと判断した見込み客、SQL は営業と話す準備ができた見込み客です。ただ、呼び名より中身が大事です。受け取りを断るときは理由をつけて戻し、黙って捨てないことも決めておきます。
時間と処理できる量。率だけ見ていると、2 つの問題を見落とします。1 週間後に電話した見込み客は、もう同じ見込み客ではありません。手が足りない段階は、あふれた分を静かに落とします。だから段階ごとに、かかった時間と、人数 × 1 人がこなせる量を並べます。
ボトルネック。Salesforce の解説は、最終目標の達成を妨げているボトルネックに KPI を置くよう勧めています。目標から各段階の率で逆算すると、必要な量をさばけない段階が見えます。次の手はそこに打ちます。制約理論の 5 つの集中ステップと同じ考え方です。
小さな例
説明のための架空の例です。理学療法・リハビリのクリニック向けの予約システムを売る会社の、前の四半期の数字です。狙うクリニックの条件に合う見込み客が 200 件、インサイドセールスに渡りました。担当は 2 人で、架電もしながら、1 人あたり四半期に約 55 件の問い合わせをさばけます。連絡できたのは 200 件中 110 件で、最初の連絡までの中央値は 4 営業日。110 件から 40 件が案件になり、営業 2 人が 12 件を受注しました。次の四半期の目標は 18 件の受注です。
逆算します。受注率 30% で 18 件とるには、案件が 60 件要ります。連絡できた 110 件から案件が 40 件だったので、連絡すべき見込み客は約 165 件。マーケティングはすでに 200 件を渡していますが、インサイドセールスが連絡できるのは 110 件までです。ボトルネックは見込み客の数でも営業でもなく、インサイドセールスの手の数と速さでした。
手は 3 つ打ちます。1 つ目は受け渡しのルールで、点数の高い 110 件はその日のうちにインサイドセールスへ、残りはメールで育てる側へ回します。2 つ目は手と時間で、1 四半期だけ架電の時間を問い合わせ対応に回し、最初の連絡は 1 営業日以内と決めます。3 つ目は測り方で、「5 営業日たっても未連絡」の件数を毎週の表に足します。次の限界も見えています。営業 2 人がさばける案件は約 60 件までです。
よくある失敗
- 早すぎる分業。専任の担当には量が要ります。量が足りないと、結局 1 人が全部をやる形に戻ります。
- 形容詞で決めた受け渡し。「質のいいリード」は議論の種になります。両方が確かめられる事実で書きます。
- 部門ごとに自分の数字だけを追う。マーケティングは件数を積み、営業は質に文句を言い、全体の目標が遠のきます。全部門で同じ表を見ます。
- いちばん低い率から直す。率が低い原因は、その前の段階にあることがあります。全体の量を止めている段階を直します。
- 他社の数字をまねる。市場が違えば率も違います。比べる相手は、自社の過去と目標です。
自社の分業を組む手順
- 段階と担当を書き出す。最初の接点から更新までの今の流れを、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに当てはめ、段階ごとに担当を 1 つ決めます。
- 受け渡しを事実で定義する。どうなったらインサイドセールスに渡すか、どうなったら案件として営業に渡すか、誰が受け取るか、断るときにどう理由をつけて戻すかを書きます。
- 1 期間分の数字を段階ごとに集める。CRM から直近の四半期の、入ってきた数、次に進んだ数、転換率を出します。足りない数字は推測で埋めず、印をつけて残します。
- 時間と処理できる量を足す。最初の連絡までの日数や商談の期間などの時間と、人数 × 1 人がこなせる量を、段階ごとに書きます。
- 目標から逆算する。次の期間の目標を各段階の率で割り、段階ごとに必要な量を出して、実際の量と処理できる量の横に並べます。
- ボトルネックを 1 つに決める。必要な量が処理できる量を超えている段階、または仕事がいちばん長く待たされている段階を選び、根拠を 2〜3 文で書きます。
- 担当つきで 3 つの手を打つ。受け渡しのルール、手の数か応答の速さ、毎週測るもの、の 3 つです。それぞれに、動かしたい数字、担当、確かめる日をつけます。
- 毎週、全部門で同じ表を見る。断られて戻った件数とその理由も含めて、各段階の担当がそろって確認します。
出典について
『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』は福田康隆氏の著作で、翔泳社の MarkeZine BOOKS から 2019 年 1 月に出ました。4 部門の母数、成功率、ゴールの整理は、Salesforce の公式の解説によります。『Predictable Revenue』はアーロン・ロスとマリルー・タイラーの本(2011 年)です。このページは私たちが自分の言葉でまとめた独立の要約で、本の章立てには沿っていません。著者や出版社が書いたり確認したり推薦したりしたものではなく、書名は本を示すためだけに使っています。ほかの考え方は戦略の本と考え方の一覧にあります。
よくある質問
THE MODEL(ザ・モデル)とは?
福田康隆氏の本(翔泳社、2019 年)と、そこで描かれた B2B の営業の仕組みのことです。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスに仕事を分け、段階ごとに受け渡しの定義と数字を持ちます。セールスフォースの日本法人で使われてきた進め方です。
インサイドセールスとフィールドセールスの違いは?
インサイドセールスは電話やメール、オンライン会議で見込み客と話し、商談にできる案件をつくります。フィールドセールスはその案件を受け取り、受注まで進めます。Salesforce の解説では、前者は案件数、後者は受注数で測ります。
分業すると、顧客との関係が途切れない?
受け渡しの定義があいまいだと途切れます。どの状態になったら渡すか、受け取る側が断るときはどう戻すかを決め、全部門が同じ表を毎週見ることで、つなぎ目の取りこぼしを減らします。
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この手順を AI に任せるためのスキルが「営業の分業と段階ごとの指標」です。材料を渡すと、AI が同じ手順で進めて、決まった形にまとめます。
Claude、ChatGPT、コーディングエージェントで使えます。ポッドに入れると、チームの全員が同じ版を使います。
出典
- 紀伊國屋書店:福田康隆『THE MODEL』(翔泳社、2019 年 1 月) — 書名、副題、出版社、刊行年月、著者の経歴 (閲覧 2026-11-04)
- ビジネス+IT:福田康隆氏の登壇者紹介 — 日本オラクル、セールスフォース、マルケトでの経歴 (閲覧 2026-11-04)
- Salesforce:The Model(ザ・モデル)とは — 4 部門の母数・成功率・ゴール、ボトルネックに KPI を置く (閲覧 2026-11-04)
- Salesforce:MQL vs. SQL(英語) — MQL と SQL の定義 (閲覧 2026-11-04)
- SaaStr:Aaron Ross への Q&A(英語) — 見込み客を探す役と契約をまとめる役を分ける (閲覧 2026-11-04)
- Goodreads:Predictable Revenue の版一覧 — Ross と Tyler、PebbleStorm、2011 年 (閲覧 2026-11-04)