ビジネスの古典
ERRC グリッドと戦略キャンバスの使い方
戦略キャンバスは、業界が何で競い、買い手が各要素をどれだけ受け取っているかを 1 枚に描く図です。ERRC グリッドはそれを描き直す道具で、要素ごとに「取り除く・減らす・増やす・付け加える」を決めます。業界の価値曲線を描き、全要素に 4 つの問いを当て、高さではなく形の違う曲線をつくります。
要点
- 戦略キャンバス:横軸に競争要素、縦軸に提供の水準。1 社に 1 本の価値曲線。
- ERRC グリッド:取り除く・減らす・増やす・付け加えるを、すべての要素に問う。
- 3 つの確認:メリハリ、独自性、事実どおりのキャッチフレーズ。
- 目安:「増やす」と「付け加える」しかないグリッドは、業界の高い版にすぎない。
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向いている場面、向かない場面
自社の商品が、他社と同じ機能と価格で比べられている。追いつくために機能を足し続け、コストが上がっている。リニューアルや新しいプランの前で、いまは業界から買っていない人にも届く案がほしい。こうした場面で使います。必要なのは要素の一覧と、買い手からの見え方だけなので、2 人の事務所でも大企業の 1 商品でも回せます。
業界そのものがもうかるかどうかの判断には向きません。それはファイブフォース分析の仕事です。また、ポジショニングの文言づくりでもありません。キャンバスで中身を決め、言葉はそのあとです。
押さえておく考え方
競争要素。業界が競い、お金をかけている点です。価格、品ぞろえ、速さ、サービス、立地など、買い手が使う言葉で書きます。5〜12 個が扱いやすい数です。
提供の水準。各要素を買い手がどれだけ受け取っているか。1〜5 のような簡単な尺度で採点します。採点は判断なので、だれの判断で、根拠は何かを残します。
価値曲線。1 社の点数を要素の順につないだ線です。混み合った市場では、各社の線がほぼ平行に並びます。全員が同じ点で競っている印です。著者たちのサイトは、キャンバスを使って目線を競合から代替手段へ、顧客からノンカスタマー(買えるのに買っていない人)へ移すよう勧めています。
4 つの問い。業界が当然と思っている要素のうち、何を取り除くか。何を業界の水準より大きく減らすか。何を大きく増やすか。業界がこれまで出していない何を付け加えるか。増やすと付け加えるは価値を上げ、取り除くと減らすはコストを下げます。差別化と低コストのどちらかを選ぶのではなく、両方を同時に狙うのがこの道具のねらいです。
3 つの確認。良い価値曲線には、メリハリ(力を入れる要素が少数に絞れている)、独自性(形が業界の曲線から離れている)、訴求力のあるキャッチフレーズ(何を出すのかを短く、事実どおりに言える)があります。事実どおりの一言が書けないなら、曲線がまだ定まっていません。
小さな記入例
架空の事実による例です。Ledgerline はポートランドにある 2 人の記帳代行事務所で、個人経営の飲食店向けのプランを考えています。地元の事務所はどこも、幅広いサービス、毎月の対面の打ち合わせ、分厚い月次報告、月末から約 3 週間後の締めで競っていて、小さな店への見積もりは月 400 ドル前後です。店主 12 人に聞くと、9 人は月次報告を読まず、10 人は食材原価率と人件費率を毎週知りたいと答え、7 人は営業時間中の領収書の持ち込みと打ち合わせを嫌い、4 人は高いからと表計算ソフトで自分で記帳していました。
| 競争要素 | 業界のいま(1〜5) | 新しい案 | 動き |
|---|---|---|---|
| サービスの幅 | 5 | 2 | 減らす(税務申告は提携の会計士へ) |
| 毎月の対面の打ち合わせ | 4 | 0 | 取り除く |
| 月次報告の厚さ | 5 | 1 | 減らす(1 枚に) |
| 数字が出る速さ | 2 | 5 | 増やす(毎週) |
| 飲食店の知識 | 2 | 5 | 増やす |
| レジのデータから毎週の原価率と人件費率 | 0 | 5 | 付け加える |
| 領収書は写真で送るだけ | 0 | 4 | 付け加える |
新しい曲線は、速さと 2 つの数字に力を集めているのでメリハリがあり、業界が高いところで下がり低いところで上がるので独自性もあります。キャッチフレーズは「原価率と人件費率が、毎週月曜に。」です。ただし、これが事実になるのはレジのデータで計算できた場合だけです。価格は、データが足りるかの確認と、表計算で記帳している 4 人にいくらなら払うかを聞く試験の 2 つが済むまで決めません。
進め方
- 比べる範囲を決める。商品、買い手、買い手が比べる競合や代替手段を 1 文で書きます。
- 競争要素を並べる。業界が競っている要素を買い手の言葉で 5〜12 個書き、顧客と話す人に直してもらいます。
- 業界の価値曲線を採点する。標準的な競合について各要素を 1〜5 で採点し、根拠かだれの判断かを書き添えます。
- 買い手とノンカスタマーを見る。買い手が気にしない要素、嫌っている要素に印をつけ、買える人がなぜ買わず、代わりに何を使っているかを書きます。
- 全要素に 4 つの問いを当てる。要素ごとに取り除く・減らす・そのまま・増やすを決め、付け加える要素を足し、それぞれに理由を残します。「取り除く」か「減らす」が空でないことを確かめます。
- 新しい曲線を業界の曲線と並べる。1 つの表に両方を書き、付け加えた要素は業界の水準を 0 として載せます。
- 3 つの確認をする。メリハリ、独自性、事実どおりのキャッチフレーズを、それぞれ合格か不合格かと理由つきで判定します。
- リニューアルの前に試す。曲線がいちばん頼っている前提を 2〜3 個挙げ、それぞれ小さく安く試します。
よくある失敗
- 増やすと付け加えるだけ。ERRC グリッドの解説も、これではコストが膨らみ、作り込みすぎになると注意しています。
- 社内の言葉で要素を書く。「CRM 連携」は機能です。「返事が来るまでの速さ」なら買い手が採点できます。
- 比べる相手を取り違える。格安チェーンと高級店を同じキャンバスに載せると、見たい形が埋もれます。
- ノンカスタマーを見ない。買わない理由に、減らすべきものが書いてあることが多いです。
- 言いすぎのキャッチフレーズ。出す日に事実である必要があります。
- キャンバスを答えとして扱う。試験で裏づけが取れるまでは、買い手についての仮説です。
どう違いを出すかが決まったら、次はどこで伸ばすかです。アンゾフの成長マトリクスで成長の道筋を並べられます。
出どころ
W・チャン・キムとレネ・モボルニュが、価値曲線が初めて登場した「Value Innovation: The Strategic Logic of High Growth」(1997 年)から「Blue Ocean Strategy」(2004 年 10 月)まで、Harvard Business Review の一連の論文で考えを練り、書籍 Blue Ocean Strategy(Harvard Business School Press、2005 年。のちに増補版)で戦略キャンバス、4 つのアクション、ERRC グリッドをまとめました。邦訳は『[新版]ブルー・オーシャン戦略』(ダイヤモンド社、2015 年)で、目次には「4 つのアクション」「アクション・マトリクス」という項目があります。書籍ではシルク・ドゥ・ソレイユなどの事例で道具を説明していますが、このページの例は私たちが作ったものです。このページは独立した要約で、著者や出版社とは関係がなく、承認も受けていません。ほかの枠組みは戦略の本のガイドにまとめています。
よくある質問
ERRC とは何の略?
Eliminate(取り除く)、Reduce(減らす)、Raise(増やす)、Create(付け加える)の頭文字です。業界が競っている要素の 1 つずつについて、やめるか、業界の水準より大きく下げるか、大きく上げるか、業界にまだない要素を足すかを決めます。
戦略キャンバスの縦軸と横軸は?
横軸に業界が競い、投資している要素を並べ、縦軸に買い手が受け取る水準をとります。各社の点を結んだ線が価値曲線です。
新しい価値曲線の良し悪しはどう見る?
キムとモボルニュは 3 つの性質を挙げています。メリハリ(力を入れる要素が絞れている)、独自性(業界の曲線と形が違う)、そして事実どおりで心に残るキャッチフレーズです。
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「ERRC グリッドと戦略キャンバス」スキルが、この手順を AI に任せられる形にしています。自社や担当する市場、数字を渡すと、AI が同じ手順で進めてまとめます。
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出典
- Blue Ocean Strategy:Strategy Canvas — 縦軸と横軸、価値曲線、ノンカスタマー (閲覧 2026-11-04)
- Blue Ocean Strategy:ERRC Grid — 4 つの問い。増やす・付け加えるだけではコストが膨らむ (閲覧 2026-11-04)
- Blue Ocean Strategy:戦略キャンバスの例 — メリハリ・独自性・訴求力のあるキャッチフレーズ (閲覧 2026-11-04)
- Harvard Business Review:Blue Ocean Strategy(2004 年 10 月) (閲覧 2026-11-04)
- ダイヤモンド社:[新版]ブルー・オーシャン戦略 — 邦訳の書誌。目次に戦略キャンバス、4 つのアクション、アクション・マトリクス (閲覧 2026-11-04)
- HBR Store:Value Innovation: The Strategic Logic of High Growth(初出 1997 年) (閲覧 2026-11-04)
- Mind Tools:The Value Curve Model — 価値曲線は 1997 年の HBR 論文で紹介された (閲覧 2026-11-04)
- Publishers Weekly:Blue Ocean Strategy(Harvard Business School Press) — 書名と出版社 (閲覧 2026-11-04)