ビジネスの古典

SWOT 分析のやり方:クロス SWOT で 4 つの表を打ち手に変える

SWOT 分析は、会社の内側の強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)を、外側の機会(Opportunities)と脅威(Threats)と並べて、打ち手を決める前に現状の認識をそろえる方法です。行動につなげるには、項目ごとに根拠を書き、クロス SWOT 分析で SO・WO・ST・WT の 4 種類の戦略に組み合わせ、いくつかを選んで担当者と期日を決めます。

要点

  • 内部:強みと弱み。名前を挙げた競合と比べて判断する。
  • 外部:機会と脅威。自社では動かせない状況。
  • クロス SWOT:掛け合わせて SO・WO・ST・WT の戦略を出す。
  • 成果物:選んだ 3〜5 つの戦略と、それぞれの担当者・最初の一歩・期日。

AI スキル

AI に、SWOT 分析から打ち手まで出させる

このスキルを AI で使う

14日間無料・カード不要

向いている場面と、向かない場面

計画の立て直し、合宿、取締役会の前など、チームで現状の見方をそろえたいときに使います。新しい規制、新しい競合、新しい技術のように外で何かが変わり、最初の対応を筋道立てて考えたいときにも向きます。会社にも、製品にも、チームにも、個人にも使えます。

SWOT は広く浅く見る最初の一手で、精密な道具ではありません。バージニア工科大学の戦略の教科書も、戦略を選ぶ厳密な方法ではなく、アイデアを出すためのブレインストーミングだとしています。どの強みが長く続くかを確かめるなら VRIO 分析、業界そのものがもうかるかを見るならファイブフォース、新しい市場か新しい製品かを選ぶならアンゾフの成長マトリクスが合います。

4 つの要素と、クロス SWOT

強みと弱みは内部のことです。自社が持っているもの、できることを、名前のある競合と比べて書きます。「経験豊富な社員」は、競合の社員より経験があるときだけ強みです。機会と脅威は外部のことです。需要、競合の動き、技術、規制、景気。書くのは状況で、自社の対応ではありません。「近所の学校がクラス分の本を求めている」は機会、「学校向けの販売を始める」は戦略です。

4 つの表だけでは、だれも何をすればいいかわかりません。ハインツ・ワイリックが 1982 年に発表した TOWS マトリクスは、内部と外部を掛け合わせて打ち手を出します。日本ではこれをクロス SWOT 分析と呼ぶことが多いです。

機会脅威
強みSO:強みで機会をつかむST:強みで脅威を小さくする
弱みWO:弱みを補って機会をつかむ(育てる、採る、組む、買う)WT:弱みを減らし、脅威を避ける守りの手

ワイリックの論文から、覚えておきたい点が 3 つあります。外部環境から考え始めること。脅威は先に手を打つ必要があるかもしれないからです。強みで脅威に正面からぶつかると裏目に出ることがあるので、ST の手は慎重に選ぶこと。そして環境は動くので、時点を変えて表をつくり直すことです。

小さな例

説明のための架空の例です。事実はすべてここに書いてあります。「りんどう書店」は、6 人で営む町の本屋です。比べる相手は、町の反対側にあるチェーン書店とネット書店。店の賃貸契約は来年更新です。

項目根拠
S1:著者イベント年 40 回、毎回 60 人ほど。チェーン書店は開いていない
W1:ネットで注文を受けられないメールで注文したいという声がある。チェーン書店はネットで売っている
W2:家賃がいちばん大きな固定費毎月の費用の約 3 分の 1
O1:学校がクラス分の本を求めている今学期、近くの 2 校から相談があった
T1:家賃の値上げ大家から、更新時に 15% 上げたいと言われた
T2:ネットの価格話題の新刊が、ネットでは店より安い

クロス SWOT で掛け合わせると、打ち手が 4 つ出ました。SO:学校のクラスを著者イベントに招き、クラス分の本と一緒に売る(S1×O1)。WO:学校と常連向けに、簡単な注文ページをつくる(W1×O1)。ST:本とセットのイベント券を売る。ネット書店にはまねできない(S1×T2)。WT:値上げに備えて、更新前に近くの小さめの物件の家賃を調べておく(W2×T1)。

選んだのは 3 つです。店長が来月までに 2 校へ、イベントとクラス分の本をまとめて提案する。スタッフ 1 人が 6 週間以内に注文ページをつくる。店主が大家との話し合いの前に、小さめの物件の見積もりを取る。イベント券は、学校での試みの結果を見てから考えます。

行動につながる SWOT 分析のやり方

  1. 前提を決める:対象、この分析で決めたいこと、期間、比べる競合を書く。
  2. 機会と脅威から書く:自社では動かせない状況を、根拠と出どころつきで書く。打ち手はここに入れない。
  3. 強みと弱みを競合と比べて書く:内部のことだけを、どう比べたかの根拠つきで書く。
  4. 大事なものに絞る:決めたいことへの影響が大きい順に、1 マス 5 つまでにして番号をふる。根拠のない項目は「要確認」に移す。
  5. クロス SWOT で掛け合わせる:SO・WO・ST・WT それぞれに 1〜3 つの戦略を書き、どの項目の組み合わせかを添える。
  6. 選んで任せる:3〜5 つの戦略を選んで理由を書き、担当者・最初の一歩・期日・測る指標を決める。やらないことも書く。
  7. 次の見直しを決める:変わりそうな外部の項目と、表をつくり直す時期を書く。

SWOT とクロス SWOT のスキルを使うと、AI がこの手順を自社の事実で進め、推測でマスを埋めずに「要確認」と書きます。

よくある失敗

  • 4 つの表で終わる:いちばん多い失敗。掛け合わせと担当者がなければ、何も変わらない。
  • 打ち手を機会に書く:「海外に出る」は戦略。機会は、それをやる価値がある需要のほう。
  • 内部と外部を混ぜる:機会の欄に強みが入ると、掛け合わせられない。
  • どの競合も持つ強み:名前のある競合と比べるか、外す。
  • 根拠がない:意見は、だれかが裏づけるまで「要確認」に置く。
  • 1 回きり:外の状況は動く。時期を決めてつくり直す。

出どころ

SWOT の起源には諸説あります。1960 年代のスタンフォード研究所(SRI)の長期計画の研究と結びつけられ、アルバート・ハンフリーの名前がよく挙がりますが、その根拠は主に本人の後年の記事です。ハーバードの教科書『Business Policy: Text and Cases』(1965、Learned・Christensen・Andrews・Guth)を起源とする説もあり、4 つの要素の考え方は著者の 1 人ケネス・アンドルーズによるとされますが、この本に SWOT の表はありません。2023 年に Long Range Planning に載った Puyt・Lie・Wilderom の文献調査は、SRI のロバート・F・スチュワートの SOFT が SWOT に名前を変えたものだとしています。TOWS マトリクスの出どころははっきりしていて、ハインツ・ワイリックが 1982 年に Long Range Planning で発表した「The TOWS Matrix: A Tool for Situational Analysis」です。このページは、私たちの言葉でまとめた独立した要約です。これらの著者や出版社が書いたり、確認したり、推薦したりしたものではありません。ほかの枠組みは戦略の本の一覧から。

よくある質問

SWOT 分析とクロス SWOT 分析の違いは?

SWOT 分析は強み・弱み・機会・脅威を書き出すところまでです。クロス SWOT 分析は、それを掛け合わせて SO・WO・ST・WT の 4 種類の戦略を考えます。海外では、1982 年にハインツ・ワイリックが発表した TOWS マトリクスとして知られています。

SWOT 分析はだれが考えた?

はっきりしていません。1960 年代のスタンフォード研究所(SRI)とアルバート・ハンフリーの名前がよく挙がり、ハーバードの教科書『Business Policy』(1965)を起源とする説もあります。2023 年の文献調査は、SRI のロバート・F・スチュワートの SOFT を起源としています。

各マスにいくつ書けばいい?

行動に移せる数にとどめます。根拠つきで 1 マス 5 つまでが目安です。長い表は、大事な項目を埋もれさせます。

AI スキル

AI に、SWOT 分析から打ち手まで出させる

「SWOT 分析とクロス SWOT(TOWS)」スキルが、この手順を AI に任せられる形にしています。自社や担当する市場、数字を渡すと、AI が同じ手順で進めてまとめます。

このスキルを AI で使う

14日間無料・カード不要

出典

  1. ハインツ・ワイリック:The TOWS Matrix(著者の公開版、アーカイブ) — 4 つの戦略、外部環境から始める、時点ごとに表をつくり直す (閲覧 2026-11-04)
  2. Weihrich(1982)The TOWS matrix、Long Range Planning 15(2) (閲覧 2026-11-04)
  3. Puyt・Lie・Wilderom(2023)The origins of SWOT analysis — ロバート・F・スチュワートと SOFT を起源とする (閲覧 2026-11-04)
  4. Puyt ほか(2020)Origins of SWOT analysis — 1965 年にスタンフォード研究所で SOFT、1967 年に SWOT へ (閲覧 2026-11-04)
  5. Wikipedia:SWOT analysis(歴史の節) — ハーバードの『Business Policy』起源説と、それへの異論 (閲覧 2026-11-04)
  6. Wikipedia:Albert S. Humphrey — SRI とのつながりは主に本人の 2005 年の記事による (閲覧 2026-11-04)
  7. バージニア工科大学のオープン教科書 Strategic Management 5.2 — 内部と外部を混ぜない、打ち手を機会に書かない、出発点であって結論ではない (閲覧 2026-11-04)
  8. Puyt・Lie・Wilderom(2023)Long Range Planning 56(3)(DOI) (閲覧 2026-11-04)
  9. Puyt ほか(2020)Academy of Management Proceedings(DOI) (閲覧 2026-11-04)
このスキルを AI で使う