公式スキル · 経営戦略

戦略の選択カスケード

戦略を5つのつながった選択として1枚に書き、どこで戦うかとどう勝つかを対でつくり、その対を「何が真でなければならないか」の一覧で確かめる。

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使う場面

AI に渡すもの

できあがるもの

1枚に書いた5つの選択、検証と担当つきの「何が真でなければならないか」の表、選んだ案か期日つきの検証の計画。

手順

  1. 範囲とアスピレーションを決める 勝利のアスピレーションを1〜2文で書く。この範囲にとって勝つとは何か、だれにとってか。最初から作り込まない。方向として扱い、力は次の2つの選択に注ぐ。
  2. どこで戦うかとどう勝つかの対をつくる 案を2〜4つ、それぞれ対として書く。どこで戦うか(どの顧客、製品、チャネル、地域、バリューチェーンのどの段階か)と、それに合うどう勝つか。どう勝つかは、その顧客に対して競合より高い価値か低いコストで勝つという優位の理屈で書き、やるとよいことの一覧にしない。どう勝つかのない「どこで戦うか」は捨てる。
  3. 対ごとに、何が真でなければならないかを書く 案ごとに、それがすばらしい選択になる条件を並べる。分け方は、業界(市場、構造)、顧客(チャネルと最終顧客がそれを評価し、お金を払うか)、組織の相対的な位置(つくれる能力とコスト)、競合(競合がどう反応するか)。この段階では、それぞれが真かどうかをまだ議論しない。
  4. 先に検証する条件を見つける 対ごとに、チームがいちばん疑っている条件に印をつける。選択を決めるのはこれらの条件。それぞれについて、どんな検証やデータが出たら決着とするか、それを安く手に入れる方法を前もって合意する。マーティンの要点は、だれかがデータを集める前に検証の方法に合意すること。
  5. 対を選ぶか、先に検証することを書く 根拠がそろっていれば対を選び、それで何をやらないことになるかを書く。そろっていなければ検証と決める日を勧める。好みで選ばない。
  6. 欠かせない能力を挙げる 選んだ対について、どう勝つかを実現する少数の活動とスキルを挙げる。それぞれにマーティンの現実の点検を当てる。競合はそれにまねできないか、まねしようとしないか。どの競合も持っている能力は必要ではあるが、勝つ理由にはならない。
  7. 支える経営の仕組みを挙げる 能力ごとに、それを育て、保つ仕組みを書く。指標、予算、採用と育成、決める権限、定期の見直し。
  8. カスケードを上下両方から確かめる 下へ読む(各選択は1つ上の選択から導かれているか)。上へ読む(仕組みは能力を育てられるか、能力はどう勝つかを実現するか)。下の選択が成り立たないなら、上の選択を見直す。
  9. 決めたことと次の行動で締める 選択か検証、それでやめること、担当、期日、まだ確かめる事実。

SKILL.md の全文

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name: strategy-choice-cascade
description: 戦略を5つのつながった選択(勝利のアスピレーション、どこで戦うか、どう勝つか、欠かせない能力、支える経営の仕組み)として1枚に書く。どこで戦うかとどう勝つかを対でつくり、選んだ対を「何が真でなければならないか」の一覧で確かめて、先に検証する条件を決める。「戦略を1枚に」「戦略の選択カスケード」「どこで戦い、どう勝つか(where to play, how to win)」「Playing to Win のテンプレート」「戦略案のどれを選ぶか」「うちの戦略が計画や施策の一覧にしか見えない理由」を聞かれたときに使う。
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# 戦略の選択カスケード

戦略とは、組織を勝てる位置に置く、つながった選択の組み合わせ。計画でも、施策の一覧でもない。P&G の元 CEO の A・G・ラフリーと、その長年の戦略の相談相手でトロント大学ロットマン経営大学院の元学長のロジャー・L・マーティンは、『Playing to Win: How Strategy Really Works』(Harvard Business Review Press、2013年。邦訳『P&G式「勝つために戦う」戦略』)で5つの選択を示した。勝利のアスピレーション、どこで戦うか、どう勝つか、欠かせない能力、支える経営の仕組み。マーティンはどこで戦うかとどう勝つかを戦略の中心と呼び、のちの著作で、この2つは対として一緒に選ばなければならないと説いている。彼が戦略でいちばん価値のある問いと呼ぶ「何が真でなければならないか」は、案についての言い争いを、検証する条件の一覧に変える。このスキルは5つの選択を1枚に書き、選んだ対をその問いで確かめる。

## 使う場面

- 会社、事業部、ブランド、部門の戦略を1枚にまとめたい。
- 経営陣が2〜3の戦略案のあいだで選ぼうとしていて、議論がかみ合わない。
- 今の戦略がビジョンの一文だけ、またはビジョンと施策の一覧で、成果が出ていない。
- 解くべき問題について意見がそろっていないときの核心の課題の見立てには使わない(先に strategy-kernel を使う)。先の読めない市場でどう計画を立てるかを選ぶのにも使わない(strategy-style-selector を使う)。

## 用意するもの

- 範囲: 会社全体、事業部、製品、部門。事業部のカスケードは、会社のカスケードの中に収まる。
- 顧客と市場、チャネル、競合、組織の今の強みとコストについての事実。
- 検討している案があれば、ユーザーの言葉で。
- だれが、いつまでに決めるか。
- 市場のデータ、シェア、顧客の行動はけっして作らない。足りないものは一度だけ聞き、そのあとは「[要確認: ...]」と書く。

## 手順

1. **範囲とアスピレーションを決める。** 勝利のアスピレーションを1〜2文で書く。この範囲にとって勝つとは何か、だれにとってか。最初から作り込まない。方向として扱い、力は次の2つの選択に注ぐ。
2. **どこで戦うかとどう勝つかの対をつくる。** 案を2〜4つ、それぞれ対として書く。どこで戦うか(どの顧客、製品、チャネル、地域、バリューチェーンのどの段階か)と、それに合うどう勝つか。どう勝つかは、その顧客に対して競合より高い価値か低いコストで勝つという優位の理屈で書き、やるとよいことの一覧にしない。どう勝つかのない「どこで戦うか」は捨てる。
3. **対ごとに、何が真でなければならないかを書く。** 案ごとに、それがすばらしい選択になる条件を並べる。分け方は、業界(市場、構造)、顧客(チャネルと最終顧客がそれを評価し、お金を払うか)、組織の相対的な位置(つくれる能力とコスト)、競合(競合がどう反応するか)。この段階では、それぞれが真かどうかをまだ議論しない。
4. **先に検証する条件を見つける。** 対ごとに、チームがいちばん疑っている条件に印をつける。選択を決めるのはこれらの条件。それぞれについて、どんな検証やデータが出たら決着とするか、それを安く手に入れる方法を前もって合意する。マーティンの要点は、だれかがデータを集める前に検証の方法に合意すること。
5. **対を選ぶか、先に検証することを書く。** 根拠がそろっていれば対を選び、それで何をやらないことになるかを書く。そろっていなければ検証と決める日を勧める。好みで選ばない。
6. **欠かせない能力を挙げる。** 選んだ対について、どう勝つかを実現する少数の活動とスキルを挙げる。それぞれにマーティンの現実の点検を当てる。競合はそれにまねできないか、まねしようとしないか。どの競合も持っている能力は必要ではあるが、勝つ理由にはならない。
7. **支える経営の仕組みを挙げる。** 能力ごとに、それを育て、保つ仕組みを書く。指標、予算、採用と育成、決める権限、定期の見直し。
8. **カスケードを上下両方から確かめる。** 下へ読む(各選択は1つ上の選択から導かれているか)。上へ読む(仕組みは能力を育てられるか、能力はどう勝つかを実現するか)。下の選択が成り立たないなら、上の選択を見直す。
9. **決めたことと次の行動で締める。** 選択か検証、それでやめること、担当、期日、まだ確かめる事実。

## 出力の形式

```markdown
# 1枚の戦略: [範囲]
**決める人:** [名前] · **決める期日:** [日付] · **作成日:** [日付]

## 1. 勝利のアスピレーション
[1〜2文]

## 2–3. どこで戦うか、どう勝つか
| 案 | どこで戦うか | どう勝つか |
|---|---|---|
| A | | |
| B | | |

**選んだ案:** [案、または「まだ: 検証を参照」] · **これでやらないこと:** [やめること、やらないこと]

## 何が真でなければならないか(選んだ対。未決なら対ごと)
| 領域 | 条件 | 疑わしさ(高/中/低) | 検証 | 担当 |
|---|---|---|---|---|
| 業界 | | | | |
| 顧客 | | | | |
| 自社の位置 | | | | |
| 競合 | | | | |

## 4. 欠かせない能力
| 能力 | 競合がまねできない、またはしない理由 | 今の不足 |
|---|---|---|

## 5. 支える経営の仕組み
| 仕組み | 育てる、または保つもの | 要る変更 |
|---|---|---|

## つながりの確認
- **下へ:** [各選択は1つ上から導かれているか]
- **上へ:** [仕組みと能力でどう勝つかを実現できるか]

## 決めたことと次の行動
1. [決めたことか検証] — [担当] — [期日]
**確認:** [要確認: ...]
```

## 例

**入力:** 「京都で手打ちの包丁をつくっている会社です。社員22人。国内の百貨店経由の販売が売上の約70%、自社のネットショップが約30%。百貨店の売上は3年続けて落ちています。案は2つ。(A)国内のプロの料理人に、研ぎと修理をつけて売る。(B)ネットショップで欧米の家庭の料理好きに売る。東京の競合はすでに Amazon で海外に売っています。親方は3人いて、新しく1人育てるには何年もかかります。森社長が3月末までに決めます。」

**出力:**

```markdown
# 1枚の戦略: 手打ちの包丁
**決める人:** 森社長 · **決める期日:** 3月末 · **作成日:** [日付]

## 1. 勝利のアスピレーション
うちの包丁で毎日料理する人が、次もまた選ぶつくり手になる。百貨店に頼らない商売で。

## 2–3. どこで戦うか、どう勝つか
| 案 | どこで戦うか | どう勝つか |
|---|---|---|
| A | 国内のプロの料理人。直接売り、研ぎと修理をつける | 差別化: つくった本人が何年も最良の状態に保つ手打ちの包丁。店頭で売る競合には出せないサービス |
| B | 欧米の家庭の料理好き。自社のネットショップで | 差別化: つくり手の物語と手仕事の質を、直接売る |

**選んだ案:** まだ: 検証を参照 · **どちらの案でもやらないこと:** 伸びを百貨店に頼ること。

## 何が真でなければならないか
**案 A**
| 領域 | 条件 | 疑わしさ | 検証 | 担当 |
|---|---|---|---|---|
| 顧客 | 料理人は包丁と研ぎの契約にお金を払う | 高 | 付き合いのある料理店(目安: 約20店)に契約を提案する [要確認: 一覧] | 営業の責任者 |
| 自社の位置 | 親方3人で、生産を落とさずに研ぎをこなせる | 高 | 今月、研ぎ作業の時間を抜き出して測る(目安: 約30件) | 工房長 |
| 競合 | 店頭で売る競合は、すぐにはサービスをつけない | 中 | 主な競合が今料理人に何を出しているかを調べる(目安: 3社) | 営業の責任者 |
| 業界 | サービスが届く範囲に料理店が十分ある [要確認: 店数] | 中 | 配送と訪問ができる範囲の料理店を数える | 営業の責任者 |

**案 B**
| 領域 | 条件 | 疑わしさ | 検証 | 担当 |
|---|---|---|---|---|
| 顧客 | 海外の家庭の料理好きが、小さなつくり手のネットショップを見つけ、信頼する | 高 | [要確認: 今の海外からのネット注文] | ネットショップの責任者 |
| 競合 | すでに Amazon で売っている東京の競合と違いを出せる | 高 | 相手の価格と品ぞろえを自社と比べる | ネットショップの責任者 |
| 自社の位置 | 顧客が受け入れられる費用で、包丁を海外に送れる | 中 | [要確認: 国ごとの包丁の配送と輸入のルール] | 業務の担当 |

## 4. 欠かせない能力(A を選んだ場合)
| 能力 | 競合がまねできない、またはしない理由 | 今の不足 |
|---|---|---|
| つくり手による研ぎと修理 | 店頭で売る競合には工房がない | 親方の時間 [要確認: 時間の計測の結果] |
| 料理人との直接の関係 | 競合は店を通して売っていて、使う人を知らない | 料理人の顧客の一覧がまだない |

## 5. 支える経営の仕組み(A を選んだ場合)
| 仕組み | 育てる、または保つもの | 要る変更 |
|---|---|---|
| 研ぎの枠を固定した工房の予定 | 研ぎのサービス | 毎週の予定を新しくする |
| 料理人の顧客台帳と訪問計画 | 料理人との関係 | 簡単な顧客の一覧と毎月の訪問 |
| 弟子の育成計画 | 何年にもわたる親方の手の数 | [要確認: 弟子を採るか] |

## つながりの確認
- **下へ:** A はアスピレーション(毎日使う人、百貨店に頼らない)から導かれる。B も導かれるが、どう勝つかが弱い。物語だけならまねしやすい。
- **上へ:** A はいちばん足りない資源である親方の時間に頼っている。能力が本物かどうかは、時間の計測で決まる。

## 決めたことと次の行動
1. 料理人への研ぎの契約の提案と、研ぎ作業の時間の計測をする — 営業の責任者と工房長 — 2月末まで
2. B のために海外からのネット注文のデータを集め、配送のルールを調べる — ネットショップの責任者 — 2月末まで
3. 森社長が検証の結果を見て、A、B、どちらでもない、のどれかを選ぶ — 3月末
**確認:** [要確認: 料理店の一覧]、[要確認: 海外からのネット注文]、[要確認: 包丁の配送のルール]
```

## 送る前のチェック

- [ ] 5つの選択がすべて1枚にあり、かみ合っている。
- [ ] どの「どこで戦うか」にも、それぞれの「どう勝つか」がある。「どこで戦うか」だけの案はない。
- [ ] どう勝つかが、改善の一覧ではなく、競合に対する優位の理屈になっている。
- [ ] 「何が真でなければならないか」が領域ごとに条件を並べ、いちばん疑わしいものに印をつけ、それぞれに検証と担当がある。
- [ ] どの欠かせない能力にも、競合がまねできない、またはしない理由がある。
- [ ] 最後に、選択か、期日つきの検証の計画が、担当つきである。

## よくある失敗

- アスピレーションだけを書いて、それを戦略と呼ぶ。
- どう勝つかで止めて、あとで実行のせいにする。能力と仕組みも戦略の一部。
- 「どこで戦うか」を何案も並べ、1つ選んでから、どう勝つかを考える。最初から対でつくる。
- どの案が正しいかを言い争い、何が真でなければならないかに合意して検証することをしない。
- どの競合も持っている能力を並べる。それは土俵にいるための能力で、勝つための能力ではない。

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出典

出典は英語のページです。

  1. Decoding the Strategy Choice Cascade - Roger L. Martin, 2023 (2026-11-04に確認)
  2. On the Inseparability of Where-to-Play and How-to-Win - Roger L. Martin, 2020 (2026-11-04に確認)
  3. What Would Have to be True? - Roger L. Martin, 2022 (2026-11-04に確認)
  4. From Laudable List to How to Really Win - Roger L. Martin, 2020 (2026-11-04に確認)
  5. Playing to Win: How Strategy Really Works - Publishers Weekly review (2026-11-04に確認)
  6. Five savvy questions for strategic success - Harvey Schachter, The Globe and Mail, February 2013 (2026-11-04に確認)